スカッシュの神様。005
第五章「成長」
大空が金沢に来てから1カ月がたった。
大空のおかげで金沢のスカッシュ人口と参加率は飛躍的に向上した。あまりこなかった円山さんも大空と練習がしたくて毎日来るようになった。
たった1カ月なのに皆のレベルが驚くほど上がっている。相乗効果もあるが、大空との練習中はこちらがミスしない限り動きは止まらないし、だんだんボールの難易度レベルを上げてくる。
僕ら相手では1ミクロンの狂いもないように見える。特に円山さんは大変だ!全日本の試合レベルで打っているのにずっとミスしてくれないのだから結局1回ミスするまでに相当体力が奪われている。それなのにあいつはケロってしている。
円山さんに聞いて今度日本のトップランカーが金沢に来ることになった。大空と1週間もやれば身体が壊れるか体力か2倍になるかどっちかだろう!
それでもまだ利き腕と反対の右でやっている。ピーターやマイクとのゲームではさすがに左で打っていたが大空の方に余裕を感じた。
どんなに速いボールでも難しいボールでもいとも簡単にとってしまうのだ。相手が打った瞬間には素早く移動してボールを自分の1番打ちやすい距離で待っている。相手のポジションを確認して相手のレベルに合わせてボールを返す。
大空が偉いのは相手やボールの難易度に関わらず、しっかり基本を守って打っていることだ。決して手抜きした打ち方はしない。だからそれを見ている皆のお手本にもなる。
来年の今頃には日本ランキングに金沢の選手がたくさん登場しそうな成長ぶりだ。
「ねえおじさんスカッシュ中に他のことばっかり考えてちゃ上手くならないよ集中しなきゃ!まだまだ修行が足りないね。そんなんじゃ目標の日本チャンピオンどころか北陸チャンピオンにも1億キロは開きがあるよ!」
「なんで俺の目標しってんだ!」「この前の飲み会で酔って叫んでたよ!とりあえず目標を金沢の女子チャンピオンの鈴木さんにおいた方がイイんじゃない。それなら3万キロぐらいの開きだし何とかなるよ多分!」「多分って大空先生頼むよ!」
「おじさん大人なんだから出来の悪い弟子を持つ僕の身にもなってよ」
「・・・。」
「今日から毎日腹筋を100回ノルマね」(かんべんしてくれ〜この鬼コーチ)