スカッシュの神様。010
第十章「悲しい出来事」
それはオリンピックが終わって3カ月後のこと大空のもとへ外国からの訪問者。
「大空起きなさい!日曜日だからって遅くまで寝てちゃだめでしょ!お客さんよ」時に鬼になる母の大きな声が耳もとで炸裂する。
「誰だい」
「チャップタラットさんてご夫婦だけど」
「今いくからお茶でもだしといてよ」大空が着替えてリビングに出てきた。
「初めまして!何かご用ですか?」
「息子が以前イングランドのスカッシュコートで一緒にスカッシュをしていただいたそうです。名前はプリマイオスって言います。」
「あっもしかしてメチャクチャスカッシュが上手くてマイクよりすごい子だ!へえ〜プリマイオス君って言うんだ。でもあれから全然会ってませんけどどうしてます。」
「1週間前にガンで亡くなりました。あの子オリンピックであなたの姿を見て、俺この世界チャンピオンの子とイングランドで互角にわたりあったんだって誇らしげに話すんです。テレビであなたの姿を見ている時だけすごく元気な表情になって・・・。それでどうしてもお礼がいいたくて・・」
「・・・。国に帰られて彼のお墓に報告することがあれば言ってあげて下さい。僕新堂大空が今までに対戦した中でプリマイオス君が最強の相手だったって!それから君の為にもこれからも絶対恥ずかしい試合はしないからって」
「どうもありがとう是非息子に伝えます。」
ご両親と握手をして別れたあと大空の瞳からは涙があふれて止まらなかった。
せっかくスカッシュの神様が与えてくれた才能を僕なんかとの練習試合しかできなかったなんて・・・。
「おじさん日本のトップランカーの仲間入りしたんだからもっと真剣に練習しなよ!おじさんにあこがれてスカッシュしてる人も数少ないだろうけどいるよきっと」
「数少ないは余計ちゃう!」
「スカッシュが大好きだけどできない人もいるんだし、スカッシュできるだけでも神様に感謝しなきゃね!」
森本も何かいつもの大空と違うことに気付いたのか「おいおいお前何かあったの?」
「いいや何でもないよ!それより練習練習!」
スカッシュの神様と後に呼ばれるこの少年は日本に戻ってから現役引退するまで結局誰にも負けなかった。
何かに後押しされてるかのようにいつも真剣なプレースタイルだった。
何かは俺には分からないけど大空にもきっと色々な経験があったんだろう。
「そうだな練習しなきゃ!いつかお前にも勝ってやるぞ!」
「その前に1ポイント取れるようにしなきゃね!」
ガクッ!相変わらずキツイんちゃう!